肩から下ろされたなまえの両足は地面につくどころかぶらりと宙に浮いている。なまえは三角頭の膝の上に座らされていた。三角頭はなまえの一回りも二回りも大きな身体を持っているので、片足に余裕で腰を下ろさせる事ができた。片手に持っていた鉈を横に立てかけ三角頭は一息つく。
「……あれー……?」
なまえの言葉は誰に反応される事もなく消えた。疑問に思うのは当然だった───ここの部屋は、なまえが目覚めた所なのだから。てっきり出口に連れて行ってもらえるものだと思い込んでいたなまえは、三角頭の行動を不思議に思う。だがそれは直ぐに払拭された。ああそういえば、肝心の目的を伝え切れていなかったと。
「わ、わたしここから出ないと!」
一緒にいて欲しいというのはあくまでこの建物から逃げ出すという意味であって、出口まで着いてきてくれれば大丈夫なのだと、そう主張して慌てて膝から飛び降りようとすると、力強く引き戻された。腹にしっかりと回された腕は、まるで逃がさないと言っているようでなまえはぞっとする。引き剥がそうと試みるが結果は目に見えていた。
「っや、やだ、はなして……」
バタバタと手足を暴れさせても、三角頭はびくともしない。一体どうしたら、焦りで良案が思いつかずなまえは考えあぐねる。味方にしたら頼もしい筈なのだ、この男は。敵に回す事は絶対に避けたい。
なまえはうんうんと頭を捻る。すると三角頭はそんな彼女の様子を見ながら、おもむろにその柔らかな太ももに無骨な手を滑らせた。
「あっ、う……やだ」
なまえは手を抑えて抵抗をしてみるも、それは何の意味も成さない。大きな手が足の上をなぞりやがて膝に達すると、そこをくるりと撫でる。擽ったさからビクリとなまえの肩が跳ねた。三角頭はその反応が気に入ったのか幾度も円を描くように指を動かすので、なまえは力がぬけて屈強な身体にもたれかかった。どこか楽しげに膝を弄っていた三角頭は、次はなまえの太ももの間に手を入れる。すり、すり、感触を確かめるように撫でていたかと思えば、柔らかさを堪能するかのように揉み始める。そしてその手がゆっくりと上がってきて股に近づくと、なまえはきゅうと足を閉じた。
「ひっん、や! お、お願いだから、やめて……!」
男性経験が皆無ななまえといえど、三角頭が行なっている事が不穏な空気を醸し出していると薄々気づいていた。太ももに挟まれた手は、今もじわりじわりとなまえの股に向けて進んでいる。下着を身につけていない災難もあいまり、なまえは余計に恐怖を覚えた。忍び寄る手を力任せに押し退けながら太ももで精一杯挟んでみるが、ただ三角頭の手が食い込んでいくだけで成果は見られない。なまえの目には段々と涙の膜が張ってくる。
とうとう三角頭の手が陰部に触れそうになった時、なまえがぎゅっと目を瞑ると瞼に収まり切らなかった涙がポロリと零れ落ちた。それは三角頭の手にぽつぽつと跡を残し、止まる気配がない。
なまえがいくら抵抗をしようと、三角頭はそれを物ともしなかった。しかし小さな嗚咽を漏らし泣くなまえの姿を見ると、今までなんの反応も見せなかった三角頭が何故かそこで漸く動きを止めたのである。