成れ果て悪魔は深淵に触れる

成れ果て悪魔は深淵に触れる

虫襖のしるべ

なまえが満面の笑みを浮かべてアルバイトから帰還した。その様相は誰が見てもなにかうれしいことがあったと推測できるであろう。それはチャーリーとヴァギーも例外ではなく、ふたりは互いに顔を見合わせてからなまえに訊ねていた。「なまえ、なにかあったの?...
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恐るる慧眼

治安もへったくれもない場所、インプシティ。そこは身分も階級も最低な悪魔が生活する、秩序という概念が存在しないところである。 なにを隠そう、そんな己の人間性とは正反対の特徴を持つ場所になまえは訪れている。仕事仲間の配達員がひとり体調不良で休養...
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地獄の夜はあたたかい

とうとう決戦の日がやってきた。あれほど渇望していた、勝利を手にするときが訪れたのだ。皆が緊張に顔をこわばらせ、しかし心の奥底から闘争心が燃え上がっている面持ちをしている。各々武器を握りしめ、天国からの扉が開かれるであろう空を睨めつけている。...
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あなたとならば

設定していた時計が予定通りに鳴り響いた。なまえはアラームを消して起床する。起き上がって大きな伸びをしてから洗面台の前へ行く。そこで顔を洗い、歯を磨く。それから髪をとかし、身支度を整えた。 今日は悪夢に苦しむことがなかった、久しぶりの寝覚めの...
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かがやきの月白

繁盛していると思しきバーの前にて、死角を掻い潜るようにして設置されているカメラが、或る映像を記録していた。店から出て愉しそうに歩く影と、その後ろを歩く影。本来ならば大して気にも留めない場面だったが、今日はなんとなく興味が惹かれ、拡大して確認...
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ちらつく切っ先

今回も戦果を残せなかった。嬉しそうな笑みを浮かべる上司───アダムが、なまえは眼前に佇み、彼女のことを見下ろしている。なまえは血の気の引いた顔でうつむき、ぎゅっと服の裾を握りしめている。「なまえちゃんも懲りないよなあ?」 愉しそうな声音で言...