クロユリ不器用に笑うきみの手を握る 「そういえば、なまえは傷だらけだな」「うん。ここに来るまで森を抜けたんだけど、そのときに木の枝で切っちゃったみたいなの」「……村の外って、どんな感じなんだ?」「別に、普通だよ。道路があって、車が走って、家があって、みたいな」「この村はちょっ... 2024.10.18クロユリ
クロユリおまえがほしい 宮田は人知れず高揚していた。今はもう帰ってしまった、なまえのことで想いを馳せる。名前を聞いたとき、脳内で何かが結びついた。確信を得たのだ。彼女が夢の中に出て来た少女であると! 忘れかけていた顔、声、総べてが合致していた。彼方へと追いやられて... 2024.10.18クロユリ
クロユリ運命が集う盤上で 上粗戸から比良境方面へと歩き、病院に到着したふたりは院内へと入る。冷房の効いた院内はとても涼しかった。さんさんと照りつける太陽の下歩いてきたなまえと石田は生き返ったような感覚に陥る。───宮田医院。この羽生蛇村にある唯一の医療機関である。診... 2024.10.18クロユリ
クロユリ序幕 なにかがが異質であるという確信はあった。だが、その答えを求める疑問を問われても答えを導き出すことは不可能だった。自分のことであるというのに、だ。必要不可欠な何かが足りない。絶対的な何かが足りない。そこまでは分かってはいるものの、しかし肝心の... 2024.10.18クロユリ