しらしらと消えてゆくゆらりゆら なまえはぎくりと足を止めた。背後からの聞き慣れた「なまえさん。こんにちは」という声に金縛りをかけられ、影を踏まれる。一度足を止めてしまったら聞こえませんでしたという言い訳は通用しない。いっそのこと無視をすれば良い話ではあるのだが、それができ... 2024.10.19しらしらと消えてゆく
しらしらと消えてゆくはてさてと 牧野慶が震えを帯びたか細い声で求導女の名を呼ぶのも、柔和な雰囲気を纏い羽生蛇村の人々に挨拶をするのも、常に自信なさげに眉が八の字になっているのも、見慣れた光景であった。皆が皆口を揃えて言うのである。彼をヘタレと言わず誰をヘタレと言うのだ、と... 2024.10.19しらしらと消えてゆく