頼りになるのは

 三角さんに腕を引かれ、それに従って歩いていると、彼はやがて現れた角を左に曲がった。その先には部屋があって、壁には不自然に穴があいている。でもその穴も、どこかおかしい。うごうごとうねるひだがたくさんついているのだ。ちょっと、いやかなり気持ち悪い。

「ね、ねえ、三角さん? もしかしなくても、わたし、あの穴を通らないといけないのかな?」

 恐る恐る穴を指差して尋ねると、三角さんはコクリと頷いた。う、うそでしょう……! そんな気持ちをこめて見あげても、彼はうんともすんとも言わない。足が重くて一歩が踏みだせないけれど、そんなわたしの頭にちらつくのがジョシュくんの急いだ方がいい、という言葉。観念して歩みを進めると、ぐっと腕をつかまれて、予想外のことにわたしはのけぞった。

「わっ、と……あの、三角さん」

 その腕の正体は、もちろんこの場に居合わせる三角さん以外にいない。どうしたの、と聞こうと思ったら彼はわたしの手を掴んだまま床に座りこんだ。当然わたしも引っ張られて腰をおろすことになる。三角さんと向かいあって座るようすは、周りからはどう見えているのだろう。

「……三角さん、ジョシュくんいわく、わたしは急がなきゃいけないらしいの」

 だからここで談笑している時間はないんじゃないかな、と言うと三角さんは頭をなでてきた。「……大丈夫、なの?」その行為の真意を尋ねてみると、彼はゆっくりと頷いた。
 このときのわたしには、三角さんは自分にとっての救世主だという気持ちしかなくて、だから彼が大丈夫だと言うのならきっと全てが問題ないのだろう、と思っていたのだ。

「……じゃあ、ちょっとだけ、お話したいなあ」

 多分わたしが一方的に話すことになっちゃうと思うけれど。そう言うと三角さんはまた頷いた。