願いよとどけ

「あ、なまえさん~!」
「ソーダ? 休憩中か?」
「ん、はい! えへへ、お掃除に使うものを買おうと思って」
「本当に掃除が好きなんだな。今度僕の部屋もやってくれないか」
「!!」
「冗談だよ。そんな驚かないでくれ」
「あ、あ、そういうわけじゃあ」
「ところで、前から思っていたことなんだが」
「?」
「僕のことはご主人様って呼んでくれないんだな」
「!!」
「指揮官くんにはそう呼ぶだろ。なにか違いでもあるのか?」
「ふぇ、ち、違いですかぁ?」
「あ、言いにくいことだったらすまない。無理に言う必要はないよ」
「そ、そんなことでは」
「ん?」
「ふ、ふぇぇ……」
「……」
「……あ、なまえさん、ごめんなさい……嫌な思いをさせちゃって……」
「!? あ、な、なんで泣く?」
「ご、ごめんなさいぃ……」
「ちょ、おい、ソーダ?」
「ふぇ!?」
「悪い。軽率だったな」
「……」
「……ソーダ?」
「ん、はい……撫で撫でうれしいです~……」
「……」
「わ、私にとってなまえさんは特別で、それで……」
「……」
「……でも」
「でも?」
「で、でも、私は、……みんなのなかのひとりなんですよね。……わ、私、なまえさんの特別になりたいです」
「……」
「め、迷惑ですよね、こんなことを言われても……ごめんなさ───」
「迷惑じゃない。寧ろ嬉しい」
「……!!」
「徹底してるな。プロとしての働きを全うしている」
「え……」
「客を喜ばせる仕事か。メイドの鑑だと思う」
「え、え……」
「おっと、会議の時間だ。ソーダ、また店に顔出すよ。じゃ!」
「え、ええ……なまえさぁん……」