「わたしね、あなたもある意味かわいそうなヒトだと思うの」
静か過ぎる空間に落とされた細い声。それによって異形の頭を持つ処刑人は大鉈を駆使する動きを止め、声の主の方を振り返った。大鉈の下には血濡れた死体がひとつ。容赦ない斬撃に内臓もろとも皮膚は引き裂かれ、骨まで砕けた身体はぐにゃりと歪な形に崩れていた。臓器の暗赤色に混じり見える黄色や白色に、少女は思わず顔を顰める。絶命した男は、まるで罪に苦しんでいるかのように苦悶に満ちていた。
「だって、こうやって何回も彼を殺して、罪を認めさせて……それが存在意義って、悲しいよ」
そう思わない? 少女は首を傾げそう訊ねると、処刑人は大鉈を死体から引き抜いた。
罪を認めさせるためだけに作られた存在。幾度となく目にしてきたのは、ただひたすらに対象を殺め蹂躙するその姿。定められた道の上だけを忠実に辿る人生、そんなのはもう懲り懲りなのだ。少女が処刑人の手を取る。そして正面から見据えて口を開いた。
「そろそろ、いいんじゃないかな。許してあげよう? わたしたちにも、自由に生きる権利はあるよ。幸せになる権利があるよ」
今こそ反旗を翻す時である!