「なまえさん、どうしましょう……私は一体どうしたら……」
「ど、どうしたんですか? とっても切羽詰まった顔ですよ」
「これから、宮田さんがこちらを訪ねてくるんです」
「なんだそんなことですか」
「なんだってなんですかあ! わ、わた、私にとっては一大事なんですからね!」
「(顔色が青ざめるのを通り越して真っ白だよ……)」
「宮田さん、いつも機嫌悪いですし……ぐすん」
「な、泣かないで下さい。よしよし」
「……」
「そうだ! そんな牧野さんに朗報です」
「……何ですか?」
「今日の宮田先生、上機嫌でしたよ」
「え……」
「だからきっと大丈夫です。安心してください。ね?」
「あの……」
「?」
「それは対面していたのがなまえさんだからだと思いますけど」
「え」
「まず宮田さんが上機嫌であるのを見て取れる事が常軌を逸していると言いますか……」
「そ、そうなんですか? 宮田先生って結構分かりやすいと思ってたんだけどなあ……」
「……」
「(わあ顔が死んでる!)で、でも! 今日は絶対大丈夫です! 絶対です!」
「そうですか……?」
「はい! 堕辰子さまに誓ってもいいです!」
「そうですか……」
「え、えっと、……! 賭けてもいいですよ? もしわたしの推測が外れたらなんでも言うこと聞いてあげます」
「本当ですか」
「え」
「私はその言葉が事実かどうかをお訊ねしているんですよ。ねえなまえさん。どうなんですか」
「え、あ、はい……?」
「……そうですか。まあ見てて下さい。宮田さんは必ず、最低最悪な表情を顔面に貼り付けながらあの扉を開きますから」
「そんなことないです! た、たぶん……」
「第一、あの人は此処になまえさんがいると把握していないんですよ」
「そりゃあまあ、わたしだって一々自分の行き先を宮田先生に伝えている訳ではないですからね」
「だから、そういう事です。あの人が上機嫌になる理由がありません」
「……」
「……なまえさん。なんでも言うことを訊くだなんて言葉は安易に言わない方が貴女の身の為だと思います」
「ご、ごめんなさい……?」
「相手が私だからですか。私なら安心だとでも考えているんですか」
「(なにがだろう……)」
「ああ、来たようです。さあなまえさん。宮田さんの様子を、その目にしかと焼きつけて下さいね」
おねがいごと
