超悪

なまえなまえ
「木舌さん……またえぐられたんですか」
「まさか! あれ以来、どうも眼玉が落ちやすくなってねぇ」
「それは困りものだぁ」
「ってことで、おれの片眼の行方、知らない?」
「う~ん、見てないです」
「そっかぁ。そうだよなぁ。チョベリバ」
「……ちょ、ば?」
「? チョベリバ」
「?」
「……あ、あれー? もしかして通じない世代?」
「ごめんなさい……どういう意味なんですか?」
「超ベリーバッドの略さ。マジ最悪! みたいな」
「なるほど」
「ならさ、今時はどんな言葉が流行ってるの?」
「ううん……わたしも、そういうのにはどうも疎いので……」
「なぁーにしてんの! オレも混ぜて!」
「うわあっどこから現れた!?」
「たまたま通りかかった!」
「平腹、グッドタイミング! 時代に置き去りにされたお兄さんに教えてよ」
「教える? なにを?」
「今はやってる言葉をね、木舌さんに教えようって話」
「流行ってる言葉ァ?」
「平腹くん、よく現世に遊びに行ってるし、そういうの詳しそう」
「すぐには思いつかねーなぁ~……うーんうーん」
「お願いだよ。時代についていけないお兄さんを助けて」
「木舌おじいちゃん」
「コラッなまえ! そんなことは言っちゃいけません!」
「……ああっ! 思い出しました! わたし、ひとつ思い出しましたよ!」
「え、なになに?」
「YDKです」
「SDK?」
「いやそれべつのやつ」
「あー! それオレも聞いたことある!」
「え? え? どういうこと? お兄さんだけまた取り残されてる!」
「木舌おじいちゃん」
「コラッ」
「殺られる前にどついて殺せの略だろ?」
「!?」
「ち、違うよ平腹くん! これは、やればできるこ、の略だよ……」
「あ、ああ~……なるほどね……驚いた」
「ん? んー?……あー……」
「……? どうしたの、平腹くん」
「いま気づいたんだけどさあ……なぁんか靴の裏にくっついてる気がするんだよなあ」
「何か踏んづけたとか?」
「地面に擦り付けても余計こびり付くだけだと思うし、いっそ直接取った方が良いんじゃないか? ティッシュとかでさ」
「そだなぁ~……あー、くそ、マジなんだよ」
「……あ」
「……おっ? なにこれ?」
「…………ちょ、ちょっと平腹、これなんかおれの眼玉に見えるんだけど」
「木舌おじいちゃんの眼玉だったもの」
「マジ? 木舌ごめんなー!」
「チョベリバ」