「これ、昨日忘れていったやつね」
「え?忘れていったって、どこに」
「え、どこって、わたしの家に」
「……俺なまえの家に行ってないんだけど」
「え」
「さては誰かが俺のフリして行きやがったなぁ!? 後で説教だ、説教!」
「……」
「てかなまえも気づけよ! 長い付き合いなんだからさあ、分かるだろ?」
「う、ううん、本当に気づかなかった。おそ松くんだと信じてやまなかった」
「……」
「あの、本当にね、分からなかった」
「ふーん」
「……お、おそ松くんこそ嘘ついてるんじゃ」
「お前が嘘ついてるな」
「えっ」
「何か隠してるだろ。俺に」
「(ギクリ)」
「なんで黙った? ん? 言ってみ? ほら」
「……」
「言えって」
ガラガラ
「ただいまー!!!」
「あれ、なまえちゃんもいる」
「……」
「こんなことならバラの花束でも買ってくるべきだったぜ」
「痛いよね~」
「(助かった……!!)みんなおかえり~」
「はい全員注目!」
「!!!」
「この中に一人、俺の」
ガラッ
「ニートたち! 梨が剥けたわよ! あらなまえちゃん、いらっしゃい。いつも馬鹿息子達と仲よくしてくれてありがとうね」
「い、いいえ。あはは」
「よかったらなまえちゃんも食べていってちょうだい」
松代さんが梨の入った大皿をテーブルの上に落とすと、みんなこぞって食いついた。おそ松くんも例外ではない。彼が単純で助かった。これでこの話は流れてほしいものである。とはいえ、一体誰が騙すようなことを……? お言葉に甘えて梨に手を伸ばしたら、こちらを見ていた一松くんと、目があった。あってしまったのだ。