人間の生命には事細かに時限が設定されている。西暦何年何月何日某時刻にアレが死んで、そのコンマx秒後にコレとソレが死ぬ。
死因は自殺や他殺事故死自然死とか様々で多種多様。オレらはそこまで介入しないから首突っ込むことはねーけど、自殺は正直止めといた方がいいと思う。賽の河原で石積みが待ってるし。完成させなきゃ三途の川を渡れずにその場に留まらないといけない。けど重ねられた石を倒すのがオレらの仕事でもある。実のところ完成間近のそれを破壊するのはなかなかの快感がある。性格が悪い? なんとでも言えばいい。
最近目をつけたなまえという女。そいつも近々死ぬ予定。まだ若えのになア。まあオレには関係ねーんだけどさ。
でもソイツに何故か惹かれる自分がいた。そう考えれば死期が近いのも悪くはない。機会があれば仲良くなるのもいいかもしれない。「オレ平腹。よろしくな!」接触を試みたのは好奇心からだった。するとなまえはのんきにも「こんにちは」って返してきやがった!そろそろ死ぬっていうのに。わからないのが当然なんだけど。「平腹、さん?わたしになんの用事ですか?」きょとんと目を丸くして首を傾げるなまえに思わず舌舐めずりをする。何も知らない女というだけで面白そうだった。地獄に来て一緒に肋角さんの配下についてほしい。それを隠すかのように「オレ、先に待ってるから」と言えば、意味がわからないという顔をしていた。当たり前だった。オレは伸びをして地獄の門から館に戻る。なまえがオレの隣に立っているのを想像するだけでワクワクしていた。はやくこっちに来てくれたらいいのになー。
遺棄に先導
