「あーっ! また殺しちゃったの!?」
そう叫べば、三角さんはお手上げといった風に両手を挙げた。「もう、あんまり殺さないでよ。何回やり直してると思ってるの?」溜め息を吐きながら言い、ぷんぷんと両頬を膨らませれば、その空気を吐き出させるように手でむにむにと揉まれた。そんなことをしたって許せないものは許せないのだ!
無残にも真っ二つになった遺体を見て、もう一度やり直しのトイレへ行かなければと重い腰を上げる。すると三角さんはなぜかわたしについてこようとした。
「だめ! 三角さんはアパートで待機するんだから!」
ちょっとだけ狼狽えた様相の三角さんは、それでも動こうとしない。頑なな背中を押してみるけれど、当然わたしの力じゃあびくともしなかった。「うっ、うう、アパートに! 行くの!」歯を食いしばりながら言うと、三角さんは振り返ってわたしの頭を撫でてきた。その行為は悪くない気分だ。
「……ね、次はちゃんと導いてあげて」
微動だにしない三角さんに縋るように頼むと、彼はほんの少しだけ首を縦に振った。忘れてしまった事実を思い出してもらわなければ困るのはわたしたちだ。
幾度となく繰り返されている事象に、嫌気がさしているわけではない。ただ、いつまでたっても終わりを迎えられない彼が哀れでしかたがなかった。
「次こそは、うまくいってほしいね」
彼には思い出してもらわなければいけないことがある。それはとっても大事なことで、彼にはずっと抱えてもらわなければいけないこと。
わたしはようやっと歩き出した三角さんの背中を見て、自分もそう定位置に戻るために足を動かした。