所業の果て

「あのひとは、私の事を甚く憎んでいるのでしょうね。こちらを見ようともしないんですよ。それはもう、面白いくらいに視線を逸らすのです。稀に目が合ったと思ったら、その眼球に低劣な激情を燃やすのです。───総べては私が悪いのでしょう。そう、悪であると。あのひとは、そう考えるのでしょう。ですが私は、彼女の倖せを願っています。彼女の隣にはいられるのは私なんです。それ以外あり得ない。これはまるで夢のようでいて夢ではないのです。現実。現実とはなんなのでしょう。少なくとも、あのひとが彼女と共に在るのは非現実であると、それだけのことですからね…。引いているのですか? 大丈夫です。大丈夫。痛いことはしませんし、嫌なこともしません。ただただ私の想いを受け止めて欲しいと、それだけなのに、なぜ貴女はいつも怖がるのですか。私が怖いですか。……後退しないでください。貴女はいつだってそうだ。偶には私のために、私だけの貴女になってはくれないのですか。なぜ拒むのですか。私は、あなたを倖せにしたい。それだけなんです。……私にこのようにして詰められるのが迷惑……ですか……? そう、ですか。そしたら残された術はひとつしかありません。こうなることは望んでいなかったのですが。しかしことは一刻を争いますからね。それではなまえさん」

来世で逢いましょう。