あすの契り

 ワイルドエリアできのみを収穫した。バッグから溢れんばかりのそれを抱えながらなまえとキバナはエンジンシティを目指すが、ふたりは徒歩ではなかなかどうして大変であることに気がついた。そこで彼は口笛を吹き、アーマーガアを呼んだ次第なのである。夕陽を反射させる黒光りする羽に、なまえは瞳をキラキラと輝かせた。そしてゴンドラに乗り込み、笑みを溢すのだ。

「わあ」
「な、こうすりゃ楽だろ?」
「はい、すごいです! とっても広いし、ガラルのひとたちがアーマーガアに頼るのがよくわかります!」
「……」
「あ、太陽が沈みそう」
「……」
「キバナさん、わたしそろそろ帰らないと」
「なんで?」
「えっ? なんでってなんでですか?」
「……なまえってさ、いっつもランスって奴に従順で自分の意思ってのを感じないんだよなあ」
「そ、そうでしょうか……?」
「なんでだよ」
「え、えっと」
「答えろ」
「……ん、んん……わたし、ランスさまに助けてもらったことがたくさんあるんです。それで、わたしもできるかぎりランスさまに、そのお礼がしたくって、……」
「……助けた? あの冷徹なやつがかよ」
「はい。もしかしたら、気まぐれだったと思うんですが」
「フーン……」
「このきのみを使ってカレーを作ってみようかなあ」
「ランスと一緒に?」
「ん~……たぶん手伝ってはくれないです」
「じゃあオレさまと作ろうぜ」
「えっ」
「なんだよ文句あんのか」
「い、いえ! でも、その、ほんとうにそろそろ帰らないと……」
「……」
「ご、ごめんなさい」
「いいって。じゃ、明日はカレーづくりな」
「えっ」
「不服か?」
「そ、そんなことはないです!」
「ならよかった」
「……ガラルで気兼ねなく話せるの、キバナさんしかいないので、わたし楽しいです」
「……それはずりーよ」
「え、え、ごめんなさい……」
「……いいんだよ謝らなくて」

 キバナがどこか満足気に鼻歌を歌うと、やがてエンジンシティのスボミーイン前に到着した。なまえはゴンドラから降りると、キバナに手を振ってふにゃりと笑う。「また明日な」その言葉に、なまえは頷いたのだった。