逃げずんばあらず

※現パロ

 なまえと童磨は快適な室温に保たれた部屋でのんびりと暖を取っていた。

「はあ~ぬくい」
「あははなまえちゃん溶けてる」
「外は寒いからこうして暖をとるのが幸せだあ」
「今年雪少ないよね」
「ね! 雪かきしなくていいから嬉しいけどね」
「えー俺はかまくら作りたいけどなあ」
「かまくらかあ~こんなに暖かいとそれこそ溶けちゃって危ないよ」
「まあそうだけど」
「はあ~ぬくい」

 なまえは童磨に寄りかかりくつろぐ。彼は目の前のもこもこした生き物をぎゅうと抱きしめた。「ぐえ、童磨くん、ちょっと苦しいかな」蛙が潰れたかのような声でそう言う彼女に、童磨はムードもへったくれもないと笑う。
 不意に、童磨にいたずら心が湧く。する、と無骨な手をなまえの服の下に滑らせ、肌を撫でる。するとそこでようやく察知したのか、なまえは童磨の手を押さえ声を上げた。

「ど、童磨くん、いまは」
「いまは、なに?」
「う、う、まだ日中だし」
「うん」
「こ、こういうのは」
「うん?」
「ひっ! やめ、やだあ」

 もう片方の手をスカートの中に忍ばせると、なまえは両足をもじもじとさせ、無意識に童磨の手を腿で挟める。彼はその弾力に余計に煽られ、思わず舌舐めずりをする。いやだいやだと暴れ始めるなまえに、童磨はいかにして彼女を宥めようか考える。そして距離を取らんと目一杯伸ばしてくる両手を片手でまとめ上げると、いよいよ彼女は顔を蒼ざめさせた。「ど、どうまくん、ほんとうに」なまえは涙を流す一歩手前、唇をわななかせ必死に主張すると、どういうわけか童磨はピタリとその動きを止めた。

「……? ど、どうまくん?」

 それを訝しげに思ったなまえは彼の名を口にする。だが、童磨は、どこを見ているのかわからない眼を携え、ジィとなまえのことを凝視している。

「俺のことを拒絶してるの?」

 ふいに、童磨はそう問うた。なまえはそれにたじろぎ、口ごもる。彼はその様相が面白くなかったのか、おもむろになまえの首元をはだけさせると、柔らかな首筋に噛み付いた。ブツリと鋭利な犬歯が柔肌に食い込み、穴を空ける。「い゛っ……!」なまえはそれに悲鳴をこぼすが、童磨は構うことなく血の流れる穴を厚い舌で舐め上げた。

「ど、っどうまくん、なんで」
「んー、なんでだろ? こうしたいって思っちゃった」
「いた、いたいっ」
「あ。ごめんね」

 童磨はすすり泣くなまえにようやっと我を取り戻すと、彼女の頭を撫で今一度抱きしめ直した。「ごめんね、なまえちゃん」なまえちゃんのことが嫌いなわけじゃないんだよ。寧ろ好き過ぎて食べちゃいたいくらいだ。童磨がそう言うと、なまえは「たべないで……」とだけ口にし、すんと鼻をすすったのだ。

「たとえなまえちゃんが俺のことを拒絶しても、きみは俺から逃げられないよ」